旅する土木技師

世界の土木遺産、まちづくり

世界の土木遺産「ローマ(イタリア)_現代版テルマエ・ロマエ」

カラカラ浴場の浴室

1 カラカラ浴場

 ヤマザキマリさんの「テルマエ・ロマエ」で一躍有名となったローマの温泉、テルメ。その中でも最も有名なテルメはカラカラ浴場(Temre di carecalla)でしょう。カラカラ浴場跡はコロッセオの南に位置し、発掘、一部復元された遺跡を見学することができます。
 このテルメは西暦212年から216年にかけて当時のカラカラ帝の命を受けて建設されたとされ、その後、アウレリアヌス帝、ディオクレティアヌス帝、テオドシウス帝によって何度も修復されましたが、西暦537年に浴場は廃止されました。テルマエ・ロマエの時代設定が西暦130年頃(ハドリアヌス帝の御代)なので、このカラカラ浴場はテルマエ・ロマエの時代から1世紀近く後の時代に建設されたものということになります。建設に当たっては付近の水脈を変えるなど大規模な土木工事が行われたようです。

 カラカラ浴場には種々の浴室の他、ジムやサウナ、水泳用プールも併設されており、また、勉強をする人やボードゲームを楽しむ人も集まっていたため「銭湯」というよりは「複合娯楽施設」のようなものであったようです。敷地総面積は16万平米もありました。

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カラカラ浴場の概念図

 浴場施設は大きな浴室から多数の小さな浴室にアクセスできるように設計されており、中央の部屋(Frigidarium)には、ローマらしい男性像の彫刻が飾られていました。

浴室に飾られていた彫刻の例
 遺跡内では彫刻の他、壁画の出土物やタイル張りの復元が展示されています。壁画は大理石で描かれていたようで当時は非常に煌びやかなものであったと想像できます。
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浴室の壁画の出土物

 また、浴室の床は大理石を細かく散りばめたタイル張りとなっており、現代でも日本を含む世界のプールや温泉の床にタイル張りが多いのもこのテルメを縁とするものなのかもしれません。

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大理石を散りばめたタイル床の復元

 遺跡内では、「もしや1500年前のタイルの残骸?」と思われるような敷石も所々で見られました。

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遺跡内の地表の敷石

 カラカラ浴場遺跡の入場料はインターネットの情報を見る限り時によって変化しているようですが、筆者が訪れた時には音声ガイド付きで1人5ユーロでした(音声ガイドは窓口でスマートフォンを手渡され、保存されている音声をイアホンなしでかけ流すだけなのであまり使いませんでした)。
 なお、夏にはカラカラ浴場遺跡内で野外オペラを鑑賞することもできるようです。

2 QC Terme ー現代のテルマエ・ロマエ

 さて、古代の浴場を見学してたくさん歩いた後はお風呂に入りたくなりますね。せっかくローマに来たのだから「ローマらしいお風呂」に入りたいというのが観光客の心理というものです。しかし、筆者が調べる限りローマ近郊には筆者が求める「ローマらしいお風呂」はなかなか見つかりませんでした。

Satrunia自然温泉など、フォトジェニックな温泉はいくつかあるようです。非常に興味をそそられましたがトスカーナ地方の辺境にあり、交通手段がなかったため今回は断念しました。【参考】アーモイタリア(Satrunia温泉)https://amoitalia.com/area/toscana/saturnia/about-saturnia/

 

 唯一見つけた意中の温泉施設がQC Termeです。「古代のカラカラ浴場、現代のQC Terme」を標語に掲げるこの施設は、最大5時間滞在で1人54ユーロと利用料がやや高額ですが、これが行って大正解の温泉施設でした。

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QC Termeの外観

 都会の喧騒を離れ、ヨーロッパらしい可愛らしい外観の施設に入ります。イタリアを初め多くの国の温泉は水着の着用が必須ですので、更衣室で水着に着替えて地下の浴場に向かいます。するとカラカラ浴場で見聞きしたイメージそのままの景色が広がっていました

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中央の部屋(Frigidarium)の様子
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Frigidariumにつながる小部屋(中央の浴槽は水風呂。奥にサウナ室があります。)


 地上に上がると、広大な土地に様々な露天風呂やサウナ、リラックスエリアが広がっています。

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地上の露天風呂
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QC Termeの館内図

 館内には、乾式サウナ、湿式サウナ、トルコ式サウナ(ハマム)、歩行用プールの他、もちろん、平たい顔族の叡智の詰まった足湯、ジャグジー、打たせ湯もあります
 極め付けは無料で提供される軽食です。受付で確認した時に食事は付かないが18時からハッピーアワーのドリンクが提供されると聞いていましたが、時間になって指定されたリラックスエリアに行くとお腹いっぱいになるほどの軽食とスパークリングワインが用意されていました(ちなみに写真は明るいですが、筆者が利用したのは5月初旬の17時頃〜22時頃の時間帯でした。この時期は20時くらいまで日は沈みません)。

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18時に提供された軽食

 帰宅時にはノベルティもいただきました。

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ノベルティ

 最初は「値段が高いな」という印象でしたが、施設内は清潔感もあり、サービスも良かったので帰る頃には身も心も満たされてしまいました。ローマ・フィウミチノ空港からタクシーで15分(12ユーロ程度)の距離にあり、バスローブ、バスタオル、サンダル等の水着以外の必要な物全て揃っているので旅の最後に疲れを癒して帰るのにおすすめです。